2人の小さなお子さんを育てながら、あたたかみのある作品を作られるおだあやこさん。

ご両親が陶芸教室を営む陶芸一家で育ったおださんが考える陶芸の魅力とは?

代表作品、「Fujiyama」の制作のお話とともに、作陶への思いをを伺いました。

 

 


 

 「小さい頃は陶芸粘土が遊び道具」

 

―陶芸との出会いを教えていただけますか?

 

父が陶芸教室をやっていて、母も手伝っていたので、陶芸はとても身近なものでした。ただ小さい頃は家にあった父の作った器はいいと思えなくて。

家のうつわが変わったお皿ばかりだったので白いうつわに憧れて、実家を出てからは百均の白いうつわで揃えました(笑)。

 

―小さい頃から陶芸をされていたんですか?

 

粘土を捏ねて遊んだり、父のろくろ作業後の削りかすを触って感触を楽しんだり、遊び道具にはなっていたんですが、本格的にやってはいませんでした。

父も年齢を重ねてきて、ゆくゆくは陶芸教室を閉じなければいけないと考えた時に、最後おしまいのお手伝いをしようかな、という感覚で実家を手伝うことにしたんです。そこから本格的に取り組むことになりました。

自分で陶芸をするようになってから、父の凄さや作品の味などもわかるようになりましたね。昔はかっこよくないと思っていた、織部釉や灰釉なども、そのよさを感じられるようになりました。

 

 

 

―主婦業もされながら、陶芸教室の先生、ご自身の制作とお忙しいですね。

 

子供が二人いるので、子供が保育所に行っている間が陶芸の時間です。陶芸教室をお手伝いしている日は自分の作品は作れないので、自分の制作は週に1回だけですが、時間を決めて取り組んでいます。夫の理解があってこそで、ありがたいなと思いますね。

陶芸教室では老人福祉施設に教えに行ったりもするんですが、出来る事に制限がある人たちにどのように楽しんでもらうか、とても勉強になります。

 

 

 

 

「同じものを何回焼いても窯を開ける時はたのしみ」

 

―Fujiyama、とても素敵な作品ですね。

 

これは5年くらい前に友人の結婚のプレゼントに作ったのがきっかけです。

はじめは、食事前に上下逆さまに置いておくと富士山のようでかわいいなと思ってお茶碗として作ろうと思ったんです。ただ、富士山を再現しようとすると高台がない、ごけ底という形になってしまい、父に「これはお茶碗じゃない」と言われてしまって。この形にしたかったし、友人もお酒を呑む子だったので、お茶碗ではなく酒器にすることにしました。

ただ買っていただいた方からはダイエット茶碗として使っていますとか、アイスを入れたらきれいでしたとか、様々な形で使っていると言っていただきます。

 

-とてもかわいい色が印象的ですね。

 

この色が面白いんですけど、難しいんです。

Fujiyamaって炭還元という焼き方で焼いているんですね。電気窯に炭を入れて一緒に焼くと還元がかかるという方法なんですけど、その炭を置く場所によって色の出方が変わるんですね。

この色を出すのが一番この作品の難しいところです。作品に炭がたくさん飛んでしまったりして、正直ロスも多いんです。

一つ一つ色の出方もかなり変わってくるので難しいんですが、その色の変化が陶芸の醍醐味だなって思います。

片側だけ還元がかからずに半分黄色のようになったものもあるんですけど、そういう色の変化も好きで。

窯の神様がいて、作品の最後に神様がイタズラしてくれたのかな、というのがおもしろいんです。

 

何回焼いても窯を開けた時はどんな色になっているかなーと楽しみですし、そういうことがあるから、ずっと同じものを飽きずに作っていられるんだと思います。

 

 

 右手前の「ちいさいFujiyama」の黄色は還元がかからず酸化焼成になって黄色が出たもの

 

-ちいさなFujiyamaも可愛いですね。

 

これは時間がなかったことからできたものなんです。

二人の子供を産んだ後に作りたくて仕方がない時期があって、やりたい気持ちが溢れてしまって、下の子が2、3か月の頃に再開しました。子供をおぶって作業をしたり、陶芸の作業台の上にクッションを置いて寝ていてもらいながら作陶していたんです。

ただ長く作業をしていられないので、こまぎれに時間を使うためにつくったのが小さいサイズなんです。

自分の出来る範囲で作ろうと思って、箸置きやブローチなども子供が生まれてから作るようになりました。

狭まった世界で、逆に世界が広がったなと思います。

 

-Fujiyamaのほかにもいろいろな作品を作られているんですね。

 

今蓋物を作っています。いろいろ試作をしてるので、近々見ていただけると思います。

ルート・ブリュック展を見て、影響を受けて作ったものもあります。他の人の作品や違う分野などからも刺激を受けますね。

 

 

カラフルな印花のパーツがルート・ブリュックを感じさせます。 

 

 本焼き前、制作中の蓋物。

 

 「ものづくりの楽しさって失敗も含めて楽しい」

 

-おださんにとって 陶芸の一番の楽しさってどういったところですか?

 

うーん、何だろう…。作るのが好きですね。正直失敗も楽しくって。

粘土が崩れても「うわー崩れちゃった笑!」って。うまくいかないと何でだろうって考えて、試行錯誤しながら自分のイメージするものに近づけていって、それができた時は嬉しいし、その作業も楽しいし。簡単にできないのが楽しいのかもしれません。

子供の頃に遊びのビーズキットでマニュアル通りに作品を作った時に、父に見せたら「それはお前の作品ではないだろう」と言われたんですね。子供の頃は、他のお家では褒めてくれるのに何でうちは認めてくれないんだろうって反発する気持ちが強かったんですけど、大人になってみると物を作るって何回も失敗をしながら自分のイメージしたものを作るっていうことで、それが楽しいんだなって思うようになりました。

 

 

 

 

―このさきやりたいことはありますか?

 

父や母だけでなく、もう亡くなった祖父母も陶芸をやっていました。ネットで陶芸用品を注文したらすぐに届くような時代ではないので、粘土や釉薬一つとっても大変だったと思いますし、窯もどうやって焼いたのかなと考えると、とても興味深いですね。

その祖父母や父や母の作品がたくさんあるんですね。その日の目を見ない作品を人に見ていただけるようにできたらいいなと思っていて、いつかギャラリーカフェをやりたいなと思ったりしています。

両親、祖父母の作品に並べるのは恥ずかしいですが、自分の作品も少しだけ並べられたらなと思います。

 

 


 

 

とても謙虚でかわいらしい印象のおださん。

ものづくりに対しても謙虚さとあたたかさを持っているからこそ、そのお人柄が感じられる作品が生まれるのだなと思いました。

代々受け継がれる陶芸に、新しい魅力を吹き込んでくれる、そんなセンスのよさも感じます。

これからの活動も楽しみです。

 

おださんの詳細・作品購入はこちらから。

 

おださんも参加されるtoukito展2019 –冬-は12月15日(日)代官山にて開催予定。

詳細は近日公開です。

 

 

(interview・酒井千佳)

 

 

 

 

【トウキクリエイターインタビュー】vol.1 ヘミノコト