現在、伊丹市立美術館で開催中の「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」に行ってきました。

フィンランドを代表する女性セラミックアーティストのルート・ブリュック(1916~1999)。

初期の愛らしい作品から後期の抽象的な作品までとても多彩な表現で、見ごたえのある展示でした。

 

 

ルート・ブリュックはもともと建築家を目指していたものの、家族に反対されてイラストレーターの道に進むことになり、名窯アラビアからスカウトを受けて専属アーティストになったそうです。

作陶の経験はなく、ほかの職人が作った作品に絵付けをするところからスタートし、その後約50年に渡って活躍するなかで、作風は大きく変わっていきました。

 

 

掻き落とし技法、スグラフィートで描かれた「結婚式」1944年の作品。

かわいらしさが感じられます。

 

1948年から1950年にかけては、石膏型を使った鋳込み成形で作陶するようになりました。

はじめは正方形だった陶板の形も、モチーフに合わせて建物や動物など、さまざまなものになっていったようです。

 

 

家の形がかわいいですね。

色彩もとてもあざやかで、間近で見たくなる美しさでした。

 

こちらはこの展覧会のメインビジュアルにもなっている「ライオンに化けたロバ」

 

 

イソップ童話に基づいて、ライオンのおなかにはロバがいます。

ライオンのたてがみのさまざまな青い釉薬の美しさは目をひきました。

宝石のような釉薬のこの質感はぜひ実際に見ていただきたいと思います。

 

 

 

ここまでご紹介した写真はルート・ブリュックの初期の作品。

1960年代後半以降になると抽象的な作品が多くなります。

こちらは撮影不可だったので写真はありませんが、まったく作風が異なり、同じ人の作品とは思えないほどでした。

たくさんの細かいタイルを組み合わせた壁画など見ごたえ十分で、釉薬の違いや凹凸の陰影など、繊細さも感じさせる作品の数々が展示されていました。

 

 

こちらはそんなタイルを使ったインスタレーション「心のモザイク ー ルート・ブリュック、旅のかけら」。

長女で現代アーティストのマーリア・ヴィルカラの作品で、2016年に行われたルート・ブリュック生誕100周年記念展によせて制作された「心のモザイク」の日本版です。

日本にちなんだお茶箱の上に、ルート・ブリュックの制作したタイルが並べられた作品。

変化していくタイルがとても美しく、色の変化がおもしろく感じられました。

 

ここではご紹介できなかった作品も含めてルート・ブリュックの独特の感性と豊かな表現を堪能できる、素晴らしい展示会でした。

特に陶芸好き、陶器好きの方はぜひご覧いただきたいと思います。

 

 

ちなみにルート・ブリュック展を楽しんだあとは、伊丹市立美術館と同じ敷地内にある国の重要文化財、旧石橋家住宅や旧岡田家住宅を見学してみるのもおすすめです。

 

 

旧石橋家住宅の一角には伊丹郷町クラフトショップも。

クラフトショップには陶芸作家の作品もたくさん並んでいます。

当サイトtoukitoでも出品されている清水美由希さんかいらあけみさんの作品もあります。

 

 

 

「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」は2019年10月20日(日)まで伊丹市立美術館で開催。

2020年4月25日からは岐阜県現代陶芸美術館で、

2020年7月18日からは久留米市美術館で開催予定。

多彩で美しいルート・ブリュックの世界にぜひ浸ってみてください。